誘い、～１ 純粋。
| 職場の彼女はいつも背中しか見えない。それでもたまに、ほんの一瞬、振り向くことがある。ほほえみながら、その横顔がとっても愛らしくカワイイ。しかし、ほとんど話をする機会がない。残念だ！！ いろんなこと、あれもこれも話(ﾊﾅｼ)してみたかった。人生の楽しみや、それに何か自分の記憶にずっと残るような、そんな話がしてみたかった。ときめいたり、ためらったり、驚いたり、恐れたり、舞い上がったり。そんな自分でありたかった。わくわく、うきうき、ドキドキするような、そんな日々でありたかった。人生というのが、自分が生きているということが、そういうことであって欲しかった。 そんな人生を生きたかった。他人に生かされるのではなくて、自分で自分を生きたかった。自由に！ 大人の利害関係や損得勘定をみんな捨てて、ありのままのホントの自分でありたかった。自分がホントに自由になれると、そう思ったのかも知れない。 正直に白状します。彼女とならそれが出来ると思えたのである。たしかにその通りで、僕はいつでもとっても素直になれたし、自分に正直にもなれた。そんな自分を恥じることもなくなったし、世間を恐れることもなくなったのである。 正直であること、純真であること、すなおであること、そうしたことが彼女の前ではごく自然に行えたのである。あるいはまた、彼女自身がそうだったから、僕もまたそうなるしかなかったのである。彼女の純粋な問いかけに、僕はただ正直に答えるしかなかった、というだけだったのである。そんな彼女の前では、僕はただ自分に正直になる以外になかったのである。 戻る。 続く。 |