index < 日誌 < K夫人:目次 < 22、「しるし」
〜1 不可解。
僕にとって、職場で見る彼女(K夫人)のいる情景は、実に不思議で不可解な世界であり続けた。生きている現実とは別の世界、日常の反対側にある異質の幻の世界であり続けたのである。現実のその向こう側にある、目に見えない壁に囲まれた、けっして届くことのない、どこか限りなく遠くの世界のように思えてならなかったのである。 彼女がいる、そこだけがまるで空間にポッカリと空(あ)いた非現実の、異界の世界のように思えてくるのである。非日常の異質な世界のように思えて来てならなかったのである。あるはずのない、あってはならない世界、あり得ない世界のように思えて来るのである。 だから、だれもそれに気づかないし、気づいてもならず、知ったりしてはいけないことのように思えて来てならなかったのである。だからまた、僕にしてみれば、それに触れても近づいてもならない、そんな、何かとっても神聖なもののように思えたのである。 戻る。 続く。 |