index <  日誌 < K夫人:目次 43、「予感」



〜1 理由。

それは例えれば事故のようなものだった。だれも予測出来ず、いつどこで起こるか誰にもわからない偶然に偶然がが重なって、それが何かのキッカケで引き金となって惹き起こされるのである。

例えると、僕は眠ったままでいて、そして目覚めたとき、彼女がいたのである。そこには彼女しかおらず、彼女だけがいたのである。ここは男性ばっかりの職場だったのである。これもまた偶然なのであって、そして仕方のない成り行きといったものであった。

実際のところ、「彼女」は誰でも良かったのである。70過ぎの婆サマでも5歳の女の子でも、誰でも良かったのである。要は、「彼女」でありさえすればそれで良かったのである。それがすべてで、それだけで十分なのであり、それ以外はすべてどうでも良かったのである。そして、それだけが、僕にはどうしても必要で、切実かつ深刻に求めたものだったのである。

そのキッカケは偶然だったのかも知れないが、その理由の根源となったものは、僕自身のどうしても避けることの出来ないものであった。いつかは、どこかでそうなる運命にあったのだと思えてくるのである。

確かにそれは必然としか言いようのないものであった。そうなるしかなかったのである。自分の心の中で何かが変わろうとしていて、そしてそれがめざめようとしていたのである。求め、願い、そしてそれが目覚めて外の現実へと出て行こうとしていたのである。

あるいは、出て行くしかなかったのである。それはまるで夢の中で一条の光を仰ぎ見るようなものだった。自分でも気づかないまま願い、祈り、そしてひたすら求め続けたものだったのである。

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