index <  日誌 < K夫人:目次 71、「接触」



~1 みずいろ(水色)

かなたに仰(あお)ぎ見る、限りなく透明な空のみずいろ(水色)が好きだった。なぜだか自分でもわからない・・・。ただ吸い込まれて、引きずり込まれてゆく。誘われ、いざなわれ、導かれて行く。何かが僕を呼んでいるように思えて来るのである。本能的なものである。

それだけが僕にとってのあおぎみる世界であったし、自分の心を開き、見つめ、追い求め続けたものだったのである。そして、いつしか気づかないままで、それを地上の現実の世界にさがし求めていたのである。それがいったい何なのかわからないままで。

それは僕にとって見れば、何かの得体の知れない暗示なのであって、その何かを象徴していたのである。そしてまた、はたしてその「何か」というのが自分でもよくわからなかったのである。ただそれはかつて自分の中にあったもので、なくてはならないものだったのであり、そしてまた、だからこそ気にもなるし、いたたまれず、どうしようもなく惹(ひ)かれてゆくのである。

それはかつて僕自身の中にあった忘れ物、失われたものであって、いまの僕から見ると、まさしく自分の中で欠落しているものなのである。もしかすると僕という人間は、始めからそのようなものとしてこの世に生まれてきたのかも知れない。しかしまた、それこそがまさしく僕自身そのものだったのである。

 戻る。                       続く。

日誌  <  目次。