~1 救い。
それは僕にとってみれば、未来への架け橋だった。暗く閉ざされた心の闇を照らし出す一条の、めざめと救いの光であった。希望であり、願いであり、祈りでもあったものだ。そしてまた、僕自身の良心でもあり続けたものだ。・・・それがあとかたもなく消えてしまったのだ。 僕は苦しんだ。僕には確かに見えていたのだ。その時までは。彼女が僕を完全黙殺するまでは。それは自由であり、願いであり、僕の良心そのものだった。僕はそれを彼女の中に見ていたのだ。そして、たしかにそれが僕には見えていたのだ。 白い雲につつまれた、ぼやけた背景の中からいろんな様々な色が、ぼやけたままで色とりどりの生きいきとした生彩を放ちながら、現れては消えてゆく。無限の変化を繰り返しながら、淡く、薄く溶け込むように。まばゆい光や色となって彼女を包(つつ)み、映しだしている。そしてその光の道の中から彼女が近づいてくる。 まぶしくて何も見えず、聞こえず、自分の心臓の鼓動だけが高なり、そしてその鼓動の音が聞えてくる。神経がおかしくなっている。めまいがして、指先がケイレンしていて、血流が止まって、全身の肌の毛が逆立ち、何か得体の知れない、しっとりとした気配がそっと僕の肌を撫でている。 戻る。 続く。 |