ヨーロッパのの起源(古代ギリシャ) p28


「個人」



それ以外に、生きてゆく方法がなかったのである。すでにある外の自然環境の中から、何か新たな異質で、意味のあるものを求め、さがしだして、捉(とら)えてゆくしかなかったのである。もはや、それまでのやり方では、生きて行くことが出来なかったのである遊牧と農耕から、商工業へ。そして略奪の階級社会へと進んで行くしかなかったのである。

あらゆる可能性といったものは、個人が、共同体の中から、共同体によって追放、または、解放された個人が、共同体の外から見つけて来るしかなかったのである。それは、見えるものとしても、あるいはまた、精神的な感性や感覚、考え方としても、そうなのである。

つまりそれが、動機であり、キッカケであり、そしてまた、必然でもあったのである。ここに、変化し運動し続ける主体としての個人が、歴史上、初めて登場する。それが生み出されたのは必然でもあったのである。

またそれが、固定することなく変化し続けたのは、―そうしてのみ、個人というのが共同体に理没しないのであるが―、それが、ギリシャの自然条件だったのである。個人というのが自(みずか)ら変化し、自分の考えで活動し続けることによってのみ、肉体としても、現実の中で生き続けることができたのである。生存できたのである。そうしたことが、ギリシャの自然環境なのであり、人間にとっての生存の条件だったのである。


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