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1、生きている線。



黒いスポーツカーのボディ反射面に、何か異次元の生き物のシルエットみたいなものを感じてしまう。まるで、得体の知れない何かの生き物が、車のボディ反射面を這ってすべりながら漂い、のたうち回っているように見えるのである。暗いヤミの中から何かが浮かんできて、映し出されている。中から映り出されてきて、そしてそれが表面にコピーされて写り、そして乗り移っている。

それは、ボディ自体の黒色と、それを背景にして、そこから反射されてきた白いシルエットの、白と黒だけの世界である。この暗い闇の中から浮かんでくる白い光の線というのがきわめて印象的で、この世の常識をすべて否定しているような、そんな得体の知れない何かとっても恐ろしいものを感じてしまうのである。まるで、直接、自分のタマシイの世界を見ているように思えてくるのである。

遠い遠い、はてしなく遠い昔に、自分たちの祖先が生きて来た神話とか伝説の世界を見ているように思えてくるのである。自分自身のタマシイの世界をのぞいているように思えてくるのである。

黒の暗い闇のなかへ、すべての色が吸い込まれて薄くなって行く。そしてその中から白いシルエットだけが、まるで生き物のように這い回りのたうち回っている。はいずり回り、さすらい、さ迷い続けているのである。注目すべきは、このシルエットのカタチと流れ、そしてその移り行きである。非常に生物的な、生きているような動きに見えてくるのである。


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