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僕にはそれが、見せかけだけの偽りの善意に見えた。だから無視するわけにはゆかなかったのである。まず何よりも、彼女は自分にウソをついている。そして周りの者に対しても。ただ誰も傷つくことがないように、丸くおさめようとしていたのである。 それは僕自身にとってみれば、もっとも大切な自分自身の良心であり、そして僕自身が彼女にひかれていった理由でもあり、そして僕と彼女の絆(きずな)そのものであった。それがなくなれば、僕と彼女の関係はどうでもよいものになってしまう。そうであるならば、始めから何もない方がまだマシなのだ。 |
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