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1、とまどい。


それは、透き通った水面の、水の中をのぞき込んだときのようだった。透き通っていて、透明で、はてしなく、そして限りなく純粋で、まるで自分の肌に触れるように直接伝わってくる。心の中が見える。見えたと、そう思えてくるのである。

限りなく純粋で透明で、そして直接である。僕と彼女をへだてるものは何もない。僕は心で、彼女の心の中をのぞき込んでいたのである。

だから、それに気づいたときは、何のことかわからず驚き当惑し、そして何よりもそんな自分に恐れおののき、戸惑ったのである。心のなかをのぞき込んでいる、そうした自分とはいったい誰なのかと。

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