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それではいったい僕は、彼女を通して、彼女の中に何を見ていたのだろうか? それは、彼女であって彼女でないものだ。現実を生きている彼女を通して、現実とは別の世界を生きている彼女を見ていたのである。ぼくには彼女・K夫人がそのように見えたのである。彼女もまた「異国人」なのだと。 生きている僕の肉体と姿は、現実の世界を生きているにもかかわらず、ぼくのこころは、いつも別の世界を生き続けてきたのである。だから僕の正体は異国人であり続けたのである。 それは、あってはならないもの、あり得ないもの、してはならないものなのである。それは現実を生きる者にとって、越えてはならない境界線だったのである。 ケジメやオキテ、サダメ、シキタリなのである。他の言い方をすると、人間社会を生きる者にとって最低限守らなければならないルールでありマナーなのである。そして僕は、それを越えようとしていた。 |
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