index< 日誌 < K夫人 < 18-356「異空間」p2- |
彼女(K夫人)がいる。そこだけがまるで、空間にぽっかりと空いた非現実の世界のように思えてならなかったのである。非日常の異界の世界のように思えてくるのである。あってはならない世界、あるはずのない、あり得ない世界のように思えてくるのである。 だから、だれもそれに気づかないし、気づいてもならず、知ったりしてはならないことのように思えてならなかったのである。だからまた、ぼくにしてみれば、それに触れても近づいてもならない、そんな何かとっても神聖なもののように思えたのである。 いつものどうってことのない、どうでもよい、ありきたりの日常の世界にあって、そこだけがぽっかりと空いた、けっして入ってはならない、異質な別の世界のように思えたのである。 なにか限りなく大切で貴いものが、けっして現実に出て来てはならないもの、ぼくたちの目には見えてはならないものが、そこにあったのだと、そう思えてならなかったのである。 |
index < 日誌 < K夫人 < 18-356「異空間」p2-