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1、怒り。


あの時のk婦人は一種独特の異様で怪しく、そして恐ろしい空気の中にいた。彼女を取り囲む空気といったものがそれで、そして彼女自身も恐ろしい形相をしていた。

両目から耳に向かう切れ目の肉が深いシワになっていて、そしてそれが吊り上がり、コメカミのあたりで血管が青筋となって浮き上がっていて、それがコメカミの上の方へ向かって、ヒクヒクと引き吊りながら震えている。それがぼくにはまるで角(つの)のように見えてきて、まるで彼女の表情全体がオニの顔のように見えたのである。

カラダ全体が興奮し上気し、めらめらと顔のまわりで燃えているようにも見える。顔も手の指も、見えるすがたの素肌の表面に、体内の血液が充満して少し赤くほてっている。肌のヒフを透かして血液の赤い色が、いつもよりかなり透けて見える。そして身体表面に滞留して、行き場のない爆発寸前の怒りをあらわにしている。

興奮と行き場のない噴火寸前の怒りの中で、それが血液の動きとなって体中を駆け巡っている。事務所の椅子に座ったまま、だれかれ見境いなく近くの者に話かけ、声を上げて怒ったり、笑ったり、睨みつけながら咬みついたりしている。自分のなかにある感情といったものを、抑えることが出来ないでいるのである。

しかし、それにしても、オジンがエロ本を見ていたことくらいで・・・。
それも実際はエロ本ではなく、美大の美術教科書(人体解剖図)なのに・・・。オモシロ。


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