index< 日誌 < K夫人 < 20-99「誤解1」


1、冤罪。


彼女(k夫人)は怒り狂い、腹を立て、噴火寸前であった。やり場のないその怒りの「ほこさき」というのを、どこへ向けたらよいのか分からず、だれかれ見境いなく咬みつき始め、一種特有の怪しげで不可解な空気の中にいた。彼女の居るそこだけが、なにか異様な別世界のように思われた。けっして近づいてはならない地雷原、禁断と戒めのブラックホールのように思えたのである。

彼女がなぜ怒っていたのか?
理由は全くバカげた話で、定年まじかの僕がエロ本を見ていたという、いわれなき誤解と冤罪からであった。それも60近いバァさんが、である。

まったくアホらしくバカげた、ウンザリする話ではあるが、しかし、その時のk夫人の仕草とか顔の表情といったものは、なるだけ詳しく記録しておかなければならない。忘れてしまわないために。k婦人の表情とか心の動きといったものが、そこに詳しく現れていたからである。

すなわち、「感情」という彼女の心の動きと、その営みといったものがどのように外の世界に現れるのかというのが、ぼくには非常に興味があり、そしてまた大事なことのように思われたからである。


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