(  市)ルネサンスへ<2015-0221 印象の世界、



③ 夏の自己主張。

風景がにじむというのは、夏の特徴であって、
光の明暗や、色の細かな違いが押しつぶされて、
浸食されていって、点と点、線と線がつながって、
そして境界線となり、見えるものの輪郭がはっきりしてくる。

これが、すなわちカタチであって、しかしそれだけでは、
何のことかわからない。しかし、そこから表面が見えてきて、
カゲの濃淡(陰影)や、模様となり、光のコントラストといったものが、
ものの表面に表現されてきて、はじめて姿(すがた)となる。

陰影とは、カゲの濃淡のことで、
その移りゆくさまを、私たちは見ている。
これを、光の側から見ると、
コントラストを見ている、ということになる。

夏には、この陰影の濃淡と、
光のコントラストが特に強く感じられる。
だから夏の風景には、強い明暗の差とともに、
奥行きと、現実感があふれている。
また、にじむことによって、景色の中の、
ものとものとの境界線がはっきり見えてきて、
それぞれのものが、実際、強く自己を主張している。

なぜ、そう感じるのか?
地上にふりそそぐ太陽の光の量が、
もっとも強い季節だからである。
太陽が地上の真上、垂直方向にあって、
もっとも効率よく地上を照らしているからである。
いいかえると、熱帯と同じ状態になるのである。
だがしかし、人間の目が感じることのできる、
許容範囲は限られている。だから、
目が感じる基準点というのが、夏には、明るい方へと傾く。

しかしそれでも、まぶしくて、
もっとも明るい部分は白く飛んで、真っ白になって、
何も見えなくなる。反対に、もっとも暗い部分は、
薄暗がりがなくなって、真っ暗になる。
(日本語ではこれを「緑陰」といっている)

要するに、夏には、降り注ぐ太陽光が強すぎて、
もっとも暗い部分と、もっとも明るい部分が、
人間の目にはどんかんになって、見えなくなるのである。

     戻る。            続く。


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