index <  日誌 < K夫人:目次 53A、「相性」



〜1A 透明。

たぶんこれは、彼女にしか成し得なかったことのように思えてならない。他の女性では、こういうふうにならなかったと思う。事実、僕の人生がそうだった。このような自分に気づくということがなかった。そうした意味で彼女は僕にとって非常に大きな衝撃であった。僕に限って言えば、たぶん彼女は、たまたま相性が良かったのだと思う。僕が自分に気づくといった意味で。

世間知らずで、どこか現実離れした、非常識で非日常的なところ。
まるで、子供や、ものごころのつく前の幼児みたいなところ、つまり、純粋で限りないもの。見栄(みえ)や世間体(せけんてい)や、現実のなにもかも無視してしまった、真実のすがたといったものを見てしまうのである。

見える現実のすべてを無視して、透かして通り越して、直接僕の心に迫ってくる。まるで僕の身体(からだ)が直接それに触れてしまったかのように。自分が生きている現実の何もかも無視して、直接せまってくる。僕自身そしてK夫人自身の。真実の、本当の、本物の姿(すがた)といったものを。

たぶん僕は、生きている自分自身の現実の姿を無視して、色やカタチやニオイや、肌に触れる感触や、そうした現実のすべてを無視して、そんなものはもはやどうでもよいものなのであって、そして、僕は生きている現実の魂(タマシイ)の世界を見ていたのである。そうした限りなく永遠の精神の世界を生きている、そう思えたのである。


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