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〜3 発見。

もちろん、本当の彼女は性悪で意地悪のオニババなのかも知れない。ズル賢く計算高いのかも知れない。しかし僕には彼女の中に、そうしたよこしまな気持ちを見る機会がなかった。見ることも、知ることもなかった。彼女はいつも純真だった。まるで小学生の女の子のように。単純明快で、いつも透き通っていて、晴れていて、世間知らずのままだった。

だから僕は彼女の前では正直になることが出来たし、正直であろうと努力もしたし、そしてまた正直になるしかなかった。すべてのこうした僕の正直さ純真さというのは彼女の前でこそあり得たことなのである。他の女性の前では、こうしたことは経験したことのない感覚だったのである。

そうやって僕は自分に正直になることが出来たし、自分自身の本当の気持ちや生き方といったものを正直に見ることが出来たし、知ることができたのである。だからそれは自分自身の発掘であり発見でもあって、そして「めざめ」と言えるものであった。

彼女の前では、僕はそうなるしかなかったのである。それはまことに仕方のないなり行き、自然の流れといったものなのである。僕は、ただそうするしかなかったのである。

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