index <  日誌 < K夫人:目次 77、「理由」



~1 偽善。

彼女が僕をキッパリと拒絶し、「妄想人間」の烙印と宣告をした後も、彼女(K夫人)は、以前と同じく僕に対しても優しかった。なんと出来た人なんだろう・・・???。

そうです。彼女は誰に対しても以前と同じく、なんら変わりなく優しいのです。つまり僕は、どうでもよい、どこにでもいる、いてもいなくても何ら関係のない、その他大勢の中の一人に過ぎなかったのである。これ以上、近づいてもならず、かといって逃げてもならず、ずっとそのままでいなさいということなのである。この時の彼女が優しいだって?。 ???、それはただの偽りの善意ではないか。

あたりさわりのない世間話や、カビのはえたような日々の日常を取り繕うだけの、表面だけの優しさではないか。そんなウソと偽りの善意など要らない。まるで缶コーヒーの自動販売機のように、あらかじめ設定されたシツケを自動反射して、何も考えずにしゃべっているだけではないか。そこには彼女自身のコトバなどどこにもない。心が見えない、消えている。あるのは上辺(うわべ)だけの自分の体裁を繕うだけの楽しさ嬉(うれ)しさだけで、中身はカラッポで何も無く、むなしい偽りだけの世界ではないか。

これでは心が見えない。タマシイが死んでゆく。偽善と見てくれだけのイミテーションの世界ではないか。かつて僕が彼女の中に見ていた願いや夢や祈りといったものは、やはりマボロシでしかなかったのか。そうであるならば、そんなもの要らない。こちらから捨ててやる。なにも要らない。死んだってかまわない。これでは生きていていったい何がうれしいものか。

 戻る。                       続く。

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