「かべ」

〜1、場違い。


いつも心の奥底のわけのわからないところに、わだかまりみたいなものが控えていて、それが何かのキッカケでふっと外に踊り出てくるのである。はたしてそれが何なのか、なぜそうなるのか、自分でもよくわからないのである。

ただ何かのキッカケで、それがどんな、何のキッカケかはどうでもよいことで、要するに、外へ出て来ようとするのである。まるで、めざめるというか、気づくというか、どうしょうもなくいたたまれなくなって、自分の顔の表情とか行動に出て来てしまうのである。

かっこ悪いし、場違いだし、空気が読めないというか、自分勝手のようにも思えてくる。でもやはり仕方がないというか、自分の中から外へ向かって出て来てしまうのである。こうした自分はいったい何なのか、どうしてそうなるのか自分でもわからないのである。

ただ、そうしてしまうというか、それが自分の義務とか務めのように思えて来て、そうしなければならないことのように思えて来て、そしてやってしまうのである。まことに致し方なくそうしてしまうのである。こういうのを、思い込みとか偏見、自分勝手、独りよがりと言うのだろう。

それは、ただもともと自分には合わないもの、もともと自分とは相性が悪いというだけのことなのかも知れない。まるで、このような場違いで異質な者として、自分がこの世に生まれてきたのかも知れない。まるでそれこそが僕自身の「理由」や使命でもるかのように。この社会とは合わない場違いな存在として。そしてそれこそが僕の存在の「理由」でもあるかのように、この世に生まれて来たのだと思えてくるのである。

目次へ             つづく。