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〜1、出て行く理由。



何かをのぞむとか、願って、そうしたのではない。そうするしかなかったのである。そこにとどまり続けることが出来なくて、致し方なく、どうにもならず、そうしただけなのである。出て行くしか無かったのである。それ以外に道が無かった、というだけのことなのである。

そこに留(とど)まり続けるのは、自分自身の死を意味している。今までの自分ではもうやって行けなくなって、自分が何か、それまでとは別のものになる以外に、生きて行く方法がないのである。そして、「とどまる」というのは、別のものになれないということを意味しているのである。このままでは生きて行けず、そしてまた、そこから出て行けなくしているのである。だから、それまでの自分とは別のものになるしかなかったのである。

だからまた、そこに留(とど)まることができなかったのである。そこから、出て行くしかないのである。たとえそれが死を招くことがあるかも知れないけれども、生きてゆく可能性もまた、あるのかも知れない。

もちろん、そんな「可能性」など始めから無いのかも知れない。なぜなら、ここでいう「可能性」というのは、当事者たる人間のあずかり知らぬ人間のそとからやって来るものだからである。人間の意志が届くことのない運命や必然性といったものだからである。

人間本人の努力だけではどうにもならないし、またそれとは別の原理でもってこの「現実」というのが動いているからである。現実というのは、人間の精神とは別のものなのである。

     戻る。                     続く。


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