<ルネサンスへ<2013-0921-1 ( 市)
周りを流れる緑の木々は、 通り過ぎて行くだけの、はかない幻のようなもの。 そして、車の中の二人は、この幻の中を漂う、 ただ一つの確かな現実である。 映画「私が愛した大統領」の中の1シーン 車の中を見ているので、 背景の緑が流れて、揺れてよく見えない。 原形がどうなっていたのかも分からないが、 そんなことは、どうでもよいことなのだ。 現実は、移ろいゆく幻のようなものなのだから。 このような、過ぎてゆく時間の流れの中を、 僕たちは生きている。 だがしかし、内面は、心の中は、 果てしない夢の中を生き、さまよい続けている。 限りなく透明で、永遠な夢を求めて。 そうなのだ。 たしかに車の中は、時間が止まっている。 そして、その中で永遠の世界を垣間見ている。 一瞬のつかの間の、はかない幻のような夢の世界である。 女の、何か言いたげな、そして、ためらいながらも、 それが、顔の表情に現れている。 ただそれだけで十分なのだ、言葉は不用なのだ。 そうなのだ。男の顔をよく見るとよい。 十分、イヤ、それ以上に、 女の気持がよく伝わっている。 この一瞬、刹那、 マブしくめまいのしそうなこの瞬間、……。 それは、はたして何秒、何分だったのだろうか? しかし実は、時間は何の意味も無い。なぜなら、 この瞬間、二人は永遠の世界を生きたのだから。 続く。 |